管理職になると、
プレイヤーだった頃とは違い
自分が急に仕事をうまくできなくなったように感じることがあります。
現場で働いていた頃は、
自分で判断して動き、
困っているスタッフがいれば助け、
周囲から頼られる場面もありました。
そうした経験の中で、
「自分は役に立てている」
という感覚を持つことも多かったと思います。
しかし管理職になると、
それまで持っていた感覚が崩れることがあります。
自分で動けば解決する仕事ではなくなり、
チームをどう動かすかを考えなければいけない。
しかし、チームは思うようには回らない。
その結果、
「自分は管理職に向いていないのではないか」
「自分には能力が足りないのではないか」
と落ち込むこともありました。
なぜ同じ人なのに、
役割が変わるだけで
こんなにも感覚が変わるのでしょうか。
私自身もこのプレイヤー時代とのギャップに
長い間悩んでいました。
最近になって、心理学の「自己決定理論」という考え方を知り、
このギャップの理由が少し理解できた気がしています。
そしてそれは、
「自分の能力が足りないから」
という単純な話ではありませんでした。
プレイヤー時代は満たされていた感覚
プレイヤーとして現場で働いていた頃を振り返ると、
仕事の中で満たされていた感覚がいくつかあったように思います。
一つは、
「自分は役に立てている」という感覚です。
職歴も長く、同じ部署で働いていたこともあり、
大体の業務の流れは分かっていました。
困っているスタッフから相談を受けることもあり、
自分の知識や経験で解決できる場面もありました。
そうした経験の中で、
自分は役に立てている
という手応えを感じることも多かったと思います。
もう一つは、
「自分で仕事を進めている」という感覚です。
日々の業務の中で、
自分が何をするかを考えて動くことができましたし、
仕事の進め方もある程度自分で決めることができました。
また、現場のメンバーとの距離も近く、
相談したり、助け合ったりする関係がありました。
振り返ってみると、
こうした感覚があることで、
仕事の中での充実感や手応えを感じやすかったのだと思います。
管理職になると何が変わるのか
管理職になると、
プレイヤーだった頃とは仕事の感覚が大きく変わりました。
それまでのように
自分が動けば状況が前に進むという仕事ではなくなり、
チームをどう動かすかを考える仕事になります。
あるとき、
チームの方向性について
「こうしていこう」という方針を伝えたことがありました。
自分としては、
チームを良くするために考えた案でした。
しかしその場でメンバーから反対意見がいくつも出て、
その方針は進めることができませんでした。
そのときに感じたのは、
「このチームをうまくまとめるには
どうしたらいいんだろう」
という戸惑いでした。
現場の頃のように、
自分が動けば解決するわけではない。
チームをどうまとめればいいのかも
よく分からない。
そして何より、
何を努力すればいいのかが分からない。
自分は頑張っているつもりでも、
行動の結果が見えてこない。
それが、
一番大きな悩みでした。
なぜプレイヤーの頃は仕事がうまく回っていると感じやすいのか
プレイヤーとして働く仕事には、
一つの特徴があります。
それは、自分の行動と結果のつながりが見えやすいということです。
困っていることがあれば、自分が動いて対応する。
経験や知識が増えるほど、できることも増えていく。
つまり、
行動する
↓
状況が変わる
↓
結果が見える
という流れを実感しやすい仕事です。
このような環境では、
「自分は役に立てている」という感覚や、
「自分で仕事を進めている」という感覚を持ちやすくなります。
そのため、
仕事がうまく回っているという実感も得やすくなるのだと思います。
人が前向きに働くときに満たされている3つの欲求
こうした感覚について、
心理学では「自己決定理論」という考え方で説明されています。
りました。
自己決定理論では、
人が前向きに行動したり、やる気を持って仕事に取り組んだりするためには、
次の3つの欲求が満たされていることが重要だとされています。
① 有能感
「自分はできている」「役に立てている」という感覚
② 自律性
「自分で選んでいる」「自分の意思で動いている」という感覚
③ 関係性
「周囲とつながれている」「信頼関係の中で働けている」という感覚
この3つの欲求が満たされると、人は内発的に動きやすくなり、
逆に崩れるとやる気やウェルビーイングが下がりやすくなると考えられています。
管理職になると有能感・自律性・関係性が揺らぎやすい
管理職になると、
プレイヤーの頃に感じていた
有能感・自律性・関係性
といった感覚が揺らぎやすくなります。
その理由は、
仕事の構造そのものが変わるからです。
まず、有能感です。
プレイヤーの頃は、自分が動けば状況が前に進み、
自分の行動が結果につながっている実感を持ちやすい仕事でした。
しかし管理職になると、
成果は自分一人の行動では決まりません。
自分が考えて方針を出しても、
チームが同じ方向を向かなければ物事は進みません。
つまり
考える
↓
メンバーが動く
↓
結果が出る
という構造になります。
そのため、
自分が努力していても結果との距離が遠くなり、
有能感を感じにくくなることがあります。
次に、自律性です。
管理職は自由に見えて、
実際には多くの要素に影響されます。
会社の方針、
組織の状況、
メンバーの考え方、
現場の事情。
さまざまな条件の中で判断をしなければならないため、
自分の意思だけで物事を決めることが難しくなります。
その結果、
仕事をコントロールしている感覚を持ちにくくなることがあります。
そして、関係性です。
プレイヤーの頃は、
現場のメンバーと同じ立場で働く中で、
相談したり助け合ったりする関係がありました。
しかし管理職になると、
メンバーをまとめる立場になります。
そのため、
これまでのように気軽に相談し合う関係が
作りにくくなることがあります。
また、
上司とメンバーの間に立つ立場になるため、
どちらの立場も理解しながら判断しなければいけません。
こうした変化によって、
職場での関係性の感じ方も
プレイヤーの頃とは少し変わってくることがあります。
まとめ
管理職になると、
それまで感じていた仕事の感覚が大きく変わります。
プレイヤーとして働いていた頃は、
自分の行動と結果がつながりやすく、
「役に立てている」「自分で仕事を進めている」といった感覚を持ちやすい仕事でした。
しかし管理職の仕事は、
自分が動けば結果が出る仕事ではありません。
チームや組織を通して成果が生まれる仕事です。
そのため、
プレイヤーの頃に満たされていた
・有能感
・自律性
・関係性
といった感覚は揺らぎやすくなります。
管理職になって
「うまくできていないのではないか」と感じることがあるのは、
能力の問題というより、
求められている仕事の構造が変わっているからです。
プレイヤーとして結果を出す力と、
チームや組織を動かす力は、
そもそも求められる能力が違います。
だからこそ、
プレイヤー時代と同じやり方ではうまくいかないことがあります。
では、
チームや組織を動かす仕事では
何が重要になるのでしょうか。
チームを動かす仕事では、
個人の意識だけではなく、
仕組みや構造をどう作るかも重要になります。
以前、
「ルールでは人は変わらない|仕組みで行動を変える」
という記事でも書きましたが、
人の行動は意識だけではなく、
環境や仕組みによって大きく変わります。


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