職場で問題が起きると、よくこんな流れになります。
ミスや抜け漏れが起きる。
注意をする。
そして、新しいルールを作る。
しかし、そのルールの内容は
「責任感を持とう」
「忘れないように意識しよう」
といった、個人の意識や能力に依存するものになりがちです。
その結果、
できる人とできない人が生まれ、
状況があまり変わらないことがあります。
以前、職場の環境を見直したときに、
この問題について考える出来事がありました。
そのとき感じたのは、
人の意識を変えようとするよりも、
仕組みを変える方が行動は変わりやすいのではないかということでした。
現場で起きていた小さな問題
訪問看護では、訪問バッグに必要な物品を入れて訪問します。
そして訪問から戻ったあと、使った物品を補充する必要があります。
しかし、実際は使った物品が補充されておらず、次に使用する人が困る、ということが起きていました。
ルールでは、仕事終わりにバッグの点検をすることになっていましたが、ほとんどできていない現状がありました。
忙しいと後回しになったり、
そもそも忘れてしまうこともあります。
その結果、
ルールはあるのに行動が変わらない状態になっていました。
なぜ「気をつける」では行動は変わらないのか
人は「気をつけよう」と思っていても、
それだけで行動を変え続けることは難しいと言われています。
行動心理学では、人の行動の多くは
環境や習慣によって決まるとされています。
つまり、
人は「意識」よりも繰り返しの中で作られる「習慣」に影響されやすいということです。
例えば車の運転。
最初は一つ一つを意識して操作しますが、
慣れてくると、ほとんど考えなくてもできるようになります。
これは、同じ環境で同じ行動を繰り返すことで習慣になっているからです。
一方で、
「忘れないようにする」
「気をつける」
といったルールは
毎回思い出す必要があります。
忙しい現場では、この「思い出す」という行為自体が難しくなります。
その結果、
ルールはあるのに行動が変わらない、という状況が起きてしまいます。
ルールではなく、環境を変える
そこで考えたのは、
ルールを増やすことではなく環境を変えることでした。
人は忙しいと忘れます。
意識できることにも限界があります。
だからこそ、
思い出さなくても行動できる環境を作れないかと考えました。
そこで、補充する物品を
訪問バッグの近くに置くようにしました。
物品が目に入ることで、
訪問中に使った物品を補充することを思い出します。
さらに、すぐ手に取れる場所にあるため、
どこかに取りに行く必要もなく、その場で補充できるようになりました。
このように、環境を変えることで
補充が自然に行われるようになりました。
人の意識ではなく、仕組みで支える
職場の問題を考えるとき、
つい「人の意識」の問題として捉えてしまうことがあります。
ミスを注意したり、
「もっと気をつけよう」と伝えたりする。
しかし、人の意識には限界があります。
だからこそ
人を変えようとするのではなく、
仕組みで支える視点が必要になるのだと思います。
行動経済学には
「ナッジ理論」と呼ばれる考え方があります。
ナッジとは、人を強制するのではなく、
環境や仕組みを工夫することで
自然に行動を促す方法です。
今回の例で言えば、
「補充を忘れないようにする」という意識に頼るのではなく、
物品が目に入る場所に置くことで、
補充という行動が自然に起こるようになりました。
まとめ
職場では、
問題が起きるたびに
「人を変えよう」としてしまいがちです。
しかし実際には、
人を変えることは簡単ではありません。
だからこそ大切なのは、
仕組みや環境を整えることです。
行動しやすい環境を作る。
自然とできる流れを作る。
そうすることで、
個人の能力や意識に頼らなくても
チームは無理なく回るようになります。
人を責めるのではなく、
仕組みで支える。
それが、
人の意識に頼らないマネジメントなのではないかと思います。


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