現場で仕事が滞っているとき、
よく出てくるのが
「ルールを決めたほうがいいんじゃないか」
という声です。
誰がやるのか分からない仕事が溜まり、
それに気づいた一部の人だけが疲れていく。
一見すると、
問題は「ルールが足りないこと」や
「責任感の差」に見えます。
でも、あるチームで起きていた状況を整理してみると、
少し違う構図が見えてきました。
目次
•仕事を回すために作ったルールが、なぜ機能しなかったのか
• 一番しんどくなりやすいのは、どんな人か
• 人が判断できる「ルールの限界」
• 現場で使われるルールの数を絞るという考え方
• 今回のやり取りから感じたこと
仕事を回すために作ったルールが、なぜ機能しなかったのか
あるチームで、こんな流れが起きていました。
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業務の、ミスや抜け漏れが起きる
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それをきっかけに、「責任の所在が曖昧だ」「ルールを決めよう」という話になる
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対策として新しいルールが作られる
-
しばらくすると、そのルールは十分に意識されなくなり、また同じようなミスが起きる
そして再び、
「別のルールを決めたほうがいいのでは」という話になる。
この流れが、
一つの業務だけでなく、複数の業務・複数の場面で繰り返されていました。
整理してみると、
会社としてのルールはすでに存在していました。
部署独自で作成したルールも、いくつかありました。
それでも仕事がうまく回らなかったのは、
「ルールがない」からではなく、
「どれを優先すればいいのか分からない」状態になっていたからです。
つまり問題は、
ルールで決まっていないことではなく、
ルールが増えすぎた結果、判断に使われなくなっていたことでした。
一番しんどくなりやすいのは、どんな人か
この状況で、特に負担が集中しやすいのは
責任感が強い人です。
• 決まっていない仕事に自然と気づく
• 「誰かがやらなければ」と思ってしまう
• 放置されている状態が我慢できない
チームにとって、とても頼りになる存在です。
ただ一方で、
曖昧な状態が続くこと自体に
強いストレスを感じやすい側面もあります。
チームの全員が同じ行動特性を持っているわけではありません。
• 決まっていれば動ける人
• 明示されないと判断できない人
• 自分から責任を背負う発想がない人
この個人差がある中で、
「もっと責任感を持ってほしい」と伝えても、
あまり効果的ではありませんでした。
人が判断できる「ルールの限界」
人間が一度に理解・記憶できるルールの数には
限界があり、
認知心理学では「実質3〜4個程度」
が有力とされています。
作業記憶は容量が小さく、
要素が増えるほど理解や実行が急激に難しくなる。
そのためビジネスや教育の現場では
「ルールは3つまでに絞れ」という原則が重視されます。
優先事項を少数に限定することで、
認知負荷を下げ、
記憶に残りやすく、
行動にもつながりやすくなります。
現場で使われるルールの数を絞るという考え方
ルールには役割や使われる場面の違い
があります。
• 会社全体のルール(法令・就業規則・安全など)
→ 守ることが前提となるもの
• 現場・部署の運用ルール
→ 日常の判断に使うもの
このうち現場で意識したのは、
「新しく決めること」ではなく、
「すでにある運用ルールをどう扱うか」でした。
実際には、
ルールは存在しているのに、
・どこに書いてあるのか分からない
・人によって解釈が違う
・結局、その場の判断に戻ってしまう
という状態になっていました。
そこで話し合ったのは、
新しいルールを足すことではなく、
・今あるルールを全員で振り返る
・本当に判断に使っているものだけを残す
・迷ったら立ち返る「基準」を明確にする
という整理です。
この状況は、薬に例えると分かりやすいかもしれません。
すでに薬(ルール)は処方されている。
でも、
・そもそも処方されていることを知らない
・知っていても、飲み方が人によってバラバラ
・毎日きちんと飲めていない
そんな状態で、
「あまり効いていない気がする」
「じゃあ、別の薬を追加しよう」
という話になっている。
その結果、
今度は薬の種類が増えすぎて、
・何をいつ飲めばいいのか分からない
・結局どれも中途半端になる
という状態に陥ってしまいます。
本当は、新しい薬を増やす前に
「今処方されている薬を、全員が把握し、同じ飲み方で使えているか」
を確認する必要がありました。
まとめ
今回のやり取りを通して感じたのは、
問題は「人」よりも「構造」にあることが多い、
ということです。
責任感が強い人が頑張ってくれている間は、
仕事自体は何とか回ってしまいます。
その分、本来見直すべき構造の歪みが
問題として表に出にくくなります。
だからこそ、
個人の頑張りに頼らなくても
迷わず判断できる仕組みがなければ、
現場は安定して回りません。
ルールは、増やすためのものではなく、
使われるためのもの。
もし現場が回っていないと感じたら、
「ルールを足す」前に、
今あるルールを
・全員が同じ内容を把握しているか
・同じ基準で判断に使われているか
ここから見直してみる価値はあると思います。


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